今年5月1日、労働関係を自由化する法律「DBA(Deregulering Beoordeling Arbeidsrelatie)」が施行されました。これに伴い、企業と個人事業主・フリーランス間の請負関係を税務当局へ届ける手続き「VAR(Verklaring Arbeidsrelatie)」が廃止され、代わって「Modelovereenkomsten」が導入されています。
では、この新しく施行された法律「DBA」と導入された「Modelovereenkomsten」とはどういったものなのか、またそもそもVARとは何だったのかをご説明します。個人事業主として移住されている方だけでなく、これから進出を予定している企業にとっても押さえておきたい制度です。
新法施行で何がどう変わる?
「VAR」廃止の背景や新法「DBA」の詳細については、後ほど詳しく解説します。
その前に、新法施行によって企業と個人事業主・フリーランスにどのような影響がおよぶのか、6つのポイントをご紹介します。
- 1.「虚偽」の雇用関係に対する、税務当局の管理が厳しくなる
- 2. 税務当局が用意した請負契約書のテンプレートを使用して締結
- 3. 従来の契約書を使用する場合、請負関係の有無の判断は当局次第
- 4. 当局と企業側とで見解が相違し、追加で納付義務が発生する場合も
- 5. 当局のテンプレートからかけ離れた場合、追徴課税の対象になるおそれ
- 6. 新法の施行から1年間(2016年5月1日〜2017年5月1日)は移行期間
廃止された「VAR」とは?
日本で人が雇用される場合に企業が雇用保険や社会保険に加入し、一部保険料を負担しているのと同様に、オランダでも雇用関係にある従業員がいれば、給与税と社会保障保険料を国に納付する義務があります。
そこで明確にする必要があるのが、企業側と個人事業主・フリーランスが雇用関係ではなく、請負関係にあるかどうか。それを判断するために、請負契約書を締結する前に企業側が税務当局へ行っていた手続きが、この「VAR」です。VARがある限り、オランダの企業は税務当局に対し、個人事業主・フリーランスと雇用関係に「無い」ことを証明できていました。
VAR廃止の背景と新法「DBA」について
このVARが廃止されることとなった理由の一つに、この制度を利用した「虚偽」の雇用関係が一部見られたことがあります。例えば、個人事業主やフリーランスが以前勤めていた企業1社のみから引き続き業務を請け負っているケースなど、実質的には雇用関係にあることが請負関係全体の7.7%となってたのです(2014年時点)。
では、VARの問題を解決すべく施行された新法「DBA」とは、どういったものなのでしょうか。
DBAの施行により、まず企業側はVARの手続きが不要となりました。しかしそれに代わって、「Modelovereenkomsten」という制度が導入され、基本的には税務当局が用意したテンプレートを使用して、企業は個人事業主・フリーランスと請負契約を締結することになったのです。
今まで使用していた請負契約書を使用する場合は、税務当局に提出し、請負関係の有無の判断を当局に仰ぐこととなりますが、この場合、税務当局と企業側とで請負関係に関する見解が相違し、給与税・社会保障保険料の納付義務が発生する場合があります。
また、税務当局が用意したテンプレートから大きくかけ離れた形で請負関係が継続されている場合は、追徴課税の対象にもなってしまいます。
現在すでに、VARの新たな申請は受け付けられておらず、Modelovereenkomstenでの運用となっています。しかし、新法の施行から1年間(2016年5月1日〜2017年5月1日)は「移行期間」として、当事者(企業と個人事業主・フリーランス)は努力義務のみが課せられています。
新法により仕事を失う個人事業主とフリーランス
現地紙「Terouw」が11月1日に報じたところによると、この一連の改正に伴い、個人事業主・フリーランスの活動に影響が出てきているそう。その数は昨年の同時期より5000人減少しており、約47,000人の仕事に影響が出ていると言われています。
このことから、オランダの個人事業主・フリーランスをサポートする団体「ZZP Nederland」で代表を務めるMaarten Post氏は、この新法の改正を目的とした嘆願書を作成。現在3000人の署名が集まっています。
来年5月1日より本格的な運用が始まるこの制度、今後の動向に注目です。