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日本食の海外展開 - 誰も気づかなかったあの国が狙い目(2017年5月3日)

日本食のアジア市場進出は本当に儲かるのか

競争激化、少子高齢化、人口減少、若者の消費行動の変化などさまざまな要因で成長の伸びしろが危惧される日本の外食産業。

外食事業を主力とする企業にとって死活問題だ。
そんななか海外市場に活路を求めて、海外進出を検討する外食企業が急速に増えている。

外食企業の海外進出ブームはいまに始まったことではないが、国内市場の伸び悩み問題、レッドオーシャン化がさらに進み、本気で検討せざるを得ない状況になっているのがその背景にある。

現在、外食企業の進出先としてもっとも注目を集めているのは成長著しい新興アジア市場だ。人口数や若年層の多さから、特に東南アジア(ASEAN)市場への関心が非常に高い。しかし、広いASEAN外食マーケットのなかで、実際に「日本食」のマーケットとなるのはほんの一部でしかないことはあまり知られていない。

ASEAN市場の可能性に関してよく聞かれる謳い文句は「総人口6億人の巨大市場」だろう。

たしかに日本の総人口の約6倍にあたる規模、そして急速成長しているマーケットであり非常に魅力的に見える。ここで注意したいのは、この6億人はあくまで総人口であって、全6億人がさまざまあるサービスやプロダクトの対象になるわけではないということだ。

現時点のASEANにおける「日本食マーケット」という切り口で見ると、この6億人という数字はかなり割り引いて考える必要がある。

日本食を海外市場で提供するときは、多くの場合食材を日本から輸送する必要があるためコスト高となり、消費者が支払う最終価格は日本国内より割高になってしまう。たとえばラーメンは日本国内では600~800円ほどだが、海外では約2倍の価格になっている場合が多い(現地労働者を雇うことでコストを抑えることができるが、その半面リスクが高まる可能性がある。この点については後述する)。

この価格に各国の消費税を加えると、たとえばラーメンと餃子だけで2000円弱、さらにビールを飲んでしまうと2000円を超えてしまうのだ。ラーメンだけでなく、海外ではほとんどの日本食は国内の2倍ほどの価格になっていると感じる。

問題は、ASEAN市場において現地の大多数の人びとがこの価格を受け入れられるかどうかということ。

人口数でASEAN最大を誇るインドネシア。人口は日本の2倍以上となる約2億6000万人。人口数だけでなく若年層が多くを占める人口構成も海外進出先として注目される理由になっている。

しかし、注目すべきはインドネシアの所得レベルだ。2017年時点でのジャカルタでの最低賃金(月給)は約335万ルピア(約2万5000円)、ジョグジャカルタでは133万ルピア(約1万1000円)となっている。

インドネシアの所得レベルに関する記事はこちら

職種や実績でばらつきはあるが、ジャカルタでは大半の人々が2万5000~5万円ほどの給与で生活しているといえる。

この給与レベルを考慮したとき、たとえば2000円という価格でも、非常に大きな出費となってしまうため、この給与水準で生活している層は見込み客ではなくなると考えるのが妥当だろう。

ラーメン、餃子、ビールに2000円を支払えるのは、現地で特別手当を支給されている日本人在住者か20万円相当以上の月給を稼いでいる現地労働者に限定される。

外務省の在留邦人統計によると、インドネシア在住日本人は約1万8000人。仮にこの1万8000人全員がジャカルタに住んでいるとしても、現地在住日本人見込み客は1万8000人しかいない。実際はジャカルタ以外に住んでいるひともいるので、1万8000人以下になる。

またインドネシアで月給20万円相当を超える職は非常に稀で、そのような層は非常に少ないといえる。

これらを考慮すると、現時点ではマーケット規模はそれほど大きくなく、スケールできる可能性は低い。もちろん、経済成長が続けば所得レベルも上がり、割高価格でも受容できる層が増えるので、将来的には多くの市場機会が生まれるはずだ。今後どのように発展していくのかウォッチしておく必要はある。

このような状況はマレーシア、タイ、ベトナムなどでもほとんど変わらないといえるだろう。

ASEAN諸国の現時点の所得レベルからみて、割高な日本食を受容できるのはシンガポールとブルネイだ。しかし、ビザ取得の難しさ、宗教的制約、マーケット規模など、進出にはさまざまなリスクが伴う。

シンガポールの1人当たりGDPは8万7800ドルと世界3番目、ブルネイは7万6000ドルと世界4番目とどちらも高所得国(IMF2016年統計)。日本は4万1000ドルで27番目。

所得水準の高さから注目されるシンガポールだが、現在就労ビザ取得が非常に難しくなっており、進出を検討している企業の悩みの種となっている。ビザ更新ができず撤退を余儀なくされる企業も少なくない。

ブルネイはイスラム教を国教とするため、外食についてはハラル認証に関する多くの手続きを踏む必要がでてくる。

さらにはシンガポールの人口は550万人、ブルネイは42万人とマーケット規模が非常に小さい。すでに多くの飲食店がしのぎを削る競争の激しい市場になっており、スケールするのは非常に難しいといっていいだろう。

「本物の日本食」がまだまだ少ない欧州マーケットが穴場

成長著しいアジア市場だが、外食企業にとって好条件が揃うまでもう少し待たなくてはならない。

では、海外進出先としてどこに目を向ければよいのだろうか。それは所得レベルが高く、競合が少なく、日本食人気が高まっている欧州市場だ。

OECDの平均賃金統計では、ドイツ4万4900ドル(年間)、フランス4万1200ドル、英国4万1300ドルと主要国は軒並み日本の3万5700ドルと比較して所得レベルが高いことが分かる(一人当たりGDPではない)。このほかスウェーデンやノルウェーなど北欧諸国も総じて所得レベルが高い。

欧州では日本のアニメやドラマ放送が増えており、その影響で日本文化、そして日本食に興味を持つひとが増加しているといわれている。

しかし、経済が伸び悩み、地理的・文化的な相違が大きく、コスト高と思われていた欧州市場は、外食企業の進出先候補として優先順位は低く、これまで注目されてこなかった。そのため、日本資本が入った日本食レストランは増えていない一方で、偽物の日本食レストランが増えているのが現状のようだ。

本物の味を知らない外国人が日本食を調理しており、ときにはとんでもないものが出されている場合がある。筆者はアイルランドで、パクチー入りの味噌汁やチャーシューの代わりにささみ肉がのったラーメンに遭遇し、衝撃を受けた記憶がある。

一方で、海外旅行で欧州から日本を訪れるひとが多くなるにつれて、本物の日本食の味を知るひとが増えており、偽物ではなく本物の日本食への需要が急速に高まっている。

そんな欧州市場で特に注目したいのはオランダだ。

人口は約1700万人、国土は九州ほどしかなく、フランスやドイツと比べると地味に映るオランダだが、欧州市場全体への事業拡大を考えているのなら非常に重要な市場となる。なぜなら、所得レベルが欧州諸国のなかでもトップクラスで、オランダの国際都市としてのネットワークを活用して欧州全土への展開がしやすいからだ。さらには日本人の就労ビザ取得が容易であり、日本企業が優位性を得ることができることもオランダに注目する理由だ。OECDの平均賃金データを見るとオランダは、5万0670ドルとほかの欧州主要国を大きく上回っている。日本と比べると1万5000ドルも高い。

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(画像)OECD平均賃金データ(2015):黃日本、紫フランス、橙英国、青ドイツ、赤オランダ

オランダの所得レベルの高さ・裕福さは貧困率の低さからも裏づけることができる。
以下は、OECDの貧困率データだ。オランダの貧困率は、フィンランド、デンマーク、ノルウェーなど裕福な北欧諸国と同等の水準であることが分かる。

(画像)OECD貧困率データ(2015):赤デンマーク、青ノルウェー、紫フィンランド、黄緑オランダ、橙スウェーデン

欧州で日本食人気が高まっていること、一方で本物の日本食を提供できるレストランが少ないことを考えると需給バランスがとれていない状況であるといえる。オランダの所得レベルの高さを前提に需要供給理論を考えてみると、多少価格が割高でも受容される素地は十分にあると推測できる。

常駐日本人調理師・マネジャーが命運を分ける

実際、海外進出を考える際に直面するもっともやっかいな問題の1つは就労ビザだ。特に日本食を提供する事業の場合、この問題は死活問題につながるので注意が必要になる。
現地で日本食レストランを開店した際、ほとんどの場合最初のお客さんは現地在住日本人になるだろう。
外食事業の海外展開で多くの企業がやりがちな失敗が、立ち上げ時は日本人マネジャーや日本人調理師を出向させるが、ある程度店がまわりだすとコスト削減のため、調理含めオペレーションのほとんどを現地人にまかせてしまうことだ。
そうなると何が起こるか。必ずといっていいほど、味の劣化、サービスの劣化が起こる。
これは筆者が長く住むシンガポールの日本食レストランでよく体験したことだ。前述したように海外において日本食は基本割高の値段設定になっている。日本人は日本国内の値段を知っているので割高感を必ず感じている。しかし、一定の味とサービスのクオリティが保たれていれば、多少割高でも常連となる。
そして日本人が常連客になると、その日本人が現地人の同僚や友人・知人を連れて行く。そこから現地人の間でも「日本人が推薦する本物の日本食が食べられるレストラン」としてSNSや口コミを通じて評判が広がっていくのだ。
もちろんすべてがこのモデルに当てはまるわけではないが、多くの場合このような形で常連が増えていくといえるだろう。
ここで、味・サービスの劣化が起こった場合、割高感を感じている日本人客は「高い金を出してまで、クオリティの低い日本食は食べたくない」となり二度と来なくなる。また、日本への海外旅行で本物の味を知った現地人にも見捨てられることになるだろう。こうした不満を持ったひとたちがブログやSNSなどで情報発信すると、店の悪評は瞬く間に広がり事態は最悪な方向に進んでしまう。
この事態を防ぐ1つの手段は、味とサービスのクオリティを担保できる日本人調理師と日本人マネジャーを現地に常駐させることだ。海外市場で生き延びている日本食レストランを観察してみると必ず日本人調理師や日本人マネジャーがいることに気づく。
しかしここで就労ビザの取得・更新ができないという大きな問題が発生する。各国政府は自国民の失業につながるという懸念から、基本的に外国人労働者の受け入れには非常に高い制約を設けている。
シンガポールでは近年就労ビザ規制の厳格化が顕著になっており、日本人を常駐させたくともできない企業が非常に多くなっている。
一方、オランダでは日本人の就労ビザ取得が他国に比べ容易なので、日本人調理師やマネジャーを常駐させ、味・サービスクオリティを維持することが可能だ。
オランダ進出の際は、現地マーケットをよく知る企業との連携が必須になる。欧州市場全体を睨んだ布石としてオランダ進出を検討しているのなら、現地でラーメン屋と焼肉屋の立ち上げ支援実績のある当社にぜひご一報を。
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